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大阪地方裁判所 昭和50年(ワ)2240号 判決 1976年5月31日

原告 山川英子

右原告訴訟代理人弁護士 山本寅之助

芝康司

亀井左取

森本輝男

藤井勲

被告 三重開発株式会社

右代表者代表取締役 牧内正一

<ほか二名>

右被告三名訴訟代理人弁護士 木村達也

主文

被告三重開発株式会社および被告津田弘司は各自、原告に対し、金六六九万一二八五円およびうち金六〇九万一二八五円に対する昭和四八年七月八日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

原告の被告牧内正一に対する請求および被告三重開発株式会社、同津田弘司に対するその余の請求を棄却する。

原告と被告牧内正一との間に生じた訴訟費用はこれを原告の負担とし、原告と被告三重開発株式会社および被告津田弘司との間に生じた訴訟費用はこれを四分し、その一を原告の負担とし、その三を右被告両名の負担とする。

この判決は原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告らは各自、原告に対し、金一四一五万三三八三円およびうち金一三二五万三三八三円に対する昭和四八年七月八日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二請求原因

一  事故の発生

1  日時 昭和四八年七月七日午後九時二〇分頃(天候晴)

2  場所 堺市浜寺昭和町五丁六四六番地府道

3  加害車 普通乗用自動車(泉五五み二七二九号)

右運転者 被告津田弘司

4  被害者 原告(旧姓小路山、事故当時一九才)

5  態様 訴外山川修運転の普通乗用車の助手席に原告が同乗して広い府道を西進中、せまい道路より飲酒運転中の被告津田車が不意に交差点に進入して山川車の助手席に衝突し、このため山川車は対向車線側の電柱に接触、停止した。

二  責任原因

1  本件事故は、被告三重開発株式会社の従業員である被告津田弘司が被告会社の保有車に同僚を乗車させ、帰社途中津田のつぎのような過失によって発生したものである。

即ち、事故発生現場交差点は、夜間通行量も少なく、信号機のない見とおしのわるい交差点であるが、被害車は時速約四〇キロメートルで西進中、加害車運転の被告津田は狭い道路より酒気帯びの状態で一時停止もせずいきなり交差点内に進入したものであって、津田には徐行ないし一時停止義務違反、酒気帯び運転の過失がある。なお、被告三重開発株式会社は資本金二五〇万円で昭和四五年一二月に設立された会社で被告牧内正一の個人企業と同視され従業員も少なく、その選任監督も専ら代表者の牧内正一が行っており、同人は被告会社の代理監督者である。

2  よって被告三重開発株式会社は加害車を保有し、業務用に使用し、自己のために運行の用に供していたものであるから自動車損害賠償保障法三条により、被告牧内正一は民法七一五条により、被告津田弘司は民法七〇九条により本件事故より生じた原告の損害を賠償する責任がある。

三  損害

1  受傷、治療経過等

(一) 受傷 前額部、後頭部打撲血腫、腰部打撲、脾臓破裂、腹腔内出血等

(二) 治療経過

昭和四八年七月七日から昭和四九年四月一日まで二六九日間入院

昭和四九年四月三日から昭和五〇年三月一四日まで通院加療(治療実日数四八日)

(三) 後遺症

頭部打撲による頑固な頭痛めまい。脾臓摘出、腰が痛み、すこし激しい仕事をすると心臓が苦しくなり、休業することが多くなって今後継続勤務に不安を感じている。

2  治療関係費

(一) 治療費 九九万三、二三〇円

原告が本件事故による受傷の治療を受けた阪堺整形外科病院における治療費 一九九万三二三〇円の未払残

(なお一〇〇万円については自賠責保険金によって支払済)

(二) 入院雑費 一三万四五〇〇円

入院中一日五〇〇円の割合による二六九日分

(三) 入院付添費 四二万円

入院中母が付添い、一日二、〇〇〇円の割合による二一〇日分

(四) 通院交通費 八、一〇〇円

一日一八〇円の割合による四五日分

3  逸失利益

(一) 休業損害

原告(昭和二八年一二月一六日生)は事故当時一九才で、中学卒業後の昭和四三年四月から旭精工株式会社に工員として勤務し、賞与を除いて一か月平均六万五四一八円の収入を得ていたが、本件事故により、昭和四八年七月八日から昭和四九年五月二〇日まで休業を余儀なくされ、その間賞与損三六万六八〇六円を含めて一〇一万六六二六円の収入を失った。

(二) 将来の逸失利益

原告は本件事故前は健康で就職以来公休以外に殆んど休務することはなかったが、前記後遺障害のため、後遺障害確定後も仕事のかたわら治療を続けておりその労働能力を四五%喪失したものであるところ、原告の就労可能年数は昭和五〇年二月一日から四六年間と考えられるから、原告の将来の逸失利益を年別ホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、八八六万二九二七円となる。

(女子労働者二〇才から二四才までの平均賃金である八三万七〇〇〇円(昭和四八年賃金センサス)×〇・四五×二三・五三=八八六万二九二七円)

4  慰藉料 五一七万八〇〇〇円

治療期間中の分として一六五万八〇〇〇円

後遺障害に対するものとして三五二万円

5  弁護士費用 九〇万円

四  損害の填補

原告は次のとおり支払を受けた。

自賠責保険金 三三六万円

五  本訴請求

よって請求の趣旨記載のとおりの判決(遅延損害金は民法所定の年五分の割合による。ただし弁護士費用に対する遅延損害金は請求しない。)を求める。

第三請求原因に対する被告の答弁

一の1ないし4は認めるが、5は争う。

二の1は牧内正一が三重開発株式会社の代理監督者であること右会社が牧内正一の個人企業であるとの点は否認し、津田の過失の内容は争うが、その余は認める。

二の2は争う。

三は不知。

原告は婚約者であった山川修と昭和五〇年五月六日結婚し山川修と二人だけの新居を構えている。女性にとって結婚生活は相当に激務の筈である。しかるに一人の主婦として元気に家事労働に従事している現在既に逸失利益は存在しないものと考えるべきである。

第四被告らの主張

過失相殺

本件事故の発生については原告にもつぎのとおりの過失があるから、損害賠償額の算定にあたり過失相殺されるべきである。即ち、本件交通事故は原告の同乗した訴外山川修運転の自動車との交差点内での出合頭の衝突事故であって、事故発生時間も午後九時ごろのことで、被告津田弘司が運転する自動車のライトが明らかに確認できているにも拘らず、訴外山川において徐行せず、前方不注視のまま同交差点に進入した過失も重大である。本件事故当時訴外山川修と原告は婚約中であって、夜のドライブ中であった。

その後原告は右山川修と結婚(昭和五〇年五月六日婚姻)して現在夫婦の関係にあって、訴外山川修の過失は被害者側の過失として過失相殺の対象となる。

よって被告は本件事故の損害については被害者側の過失相殺を求める。

第五証拠≪省略≫

理由

第一事故の発生

請求原因一の1ないし4の事実は、当事者間に争がなく、同5の事故の態様については後記第二の二で認定するとおりである。

第二責任原因

一  運行供用者責任

被告三重開発株式会社(以下被告会社という)が本件加害自動車の保有者であること右会社の従業員である被告津田弘司が加害自動車に同僚を乗車させ、帰社途中に本件事故を発生させた事実は当事者間に争いがない。そうすると、被告会社は本件事故当時本件加害自動車を自己のために運行の用に供していたものと認められるから、被告会社は自動車損害賠償保障法三条により本件事故による原告の損害を賠償する責任がある。

二  一般不法行為責任

≪証拠省略≫によると、つぎの事実が認められる。

1  本件事故現場は、東西に通ずる車道幅員九・一メートルの府道大阪、高石線と南北に通じている幅員四・五メートルの道路とが交差している信号機の設置されていない交差点であって、右府道両側には各一・五メートルの歩道があり、車道内は西行き四・六メートル、東行き四・五メートルの幅でセンターラインによって区分されており、路面はアスファルト舗装され、平担で、事故当時乾燥していた。

この道路の現場交差点の見とおし状況は、訴外山川修が進行していた東から西へは前方はよいが東進してきて、この交差点に入る左右(南北)角は人家があって、見とおしが悪く、附近は最高速度を時速四〇キロメートルに制限されている。一方被告津田が進行していた四・五メートルの道路の方も府道に入る右(東)角は人家によって見とおしがさえぎられているだけでなく、府道南側沿いの歩道南端と同位置に停止線がひかれ、さらにそれより南寄り(手前)に堺南警察署と堺市の名で「危い、徐行せよ」との立看板が道路左端沿いに設置されている。

2  ところで被告津田は事故当時被告会社の女事務員を右会社保有の自動車で高石市羽衣駅前まで送り届けての帰途、事故現場交差点を左折して前記府道を西進すべく、右交差点附近まで加害自動車を運転して北進してきたが、右交差点手前の前記警告の立看板をみてそれまでの速度時速約四〇キロメートルを二〇ないし三〇キロメートルに減速したものの、当時呼気一リットルにつき〇・二五ミリグラム以上のアルコール分を身体に保有する程度に酒気を帯びていたこともあって、注意力も散慢になっており、それ以上に一時停止して左右の安全を確認したのち交差点内に進入すべきであるのに、これを怠り、そのまゝの状態で交差点内に進入したため時速約四〇キロメートルで助手席に原告を乗せて右府道の西行き車道南端から約二メートル中央寄りを西進していた、訴外山川修運転の車輛左側面部に自車前部を衝突させ、原告を負傷させた。

3  なお訴外山川においても前記のとおり左右の見とおしのきかない交差点を通過するのであり、しかも衝突地点の約一一メートル手前で左方道路からライトの光がさしているのを認め、かつそこが交差点になっていることも知っていたのであるから、ただちに危険を防止するために警音器を吹鳴したうえ減速すべきであるのにこれらの措置をとらないままで交差点内に進入した点に過失が認められる。

4  以上認定の事実によれば被告津田は狭路から左右のみとおしの悪い交差点に進入するに際し一時停止して左右の交通の安全を確認すべき注意義務を怠った過失により本件事故を発生させたものであるから被告津田は民法七〇九条により右事故による原告の損害を賠償する責任がある。

三  代理監督者責任

民法七一五条二項にいう「使用者に代りて事業を監督する者」とは客観的にみて、使用者に代り現実に事業を監督する地位にあるものを指称するものと解すべきであり、使用者が法人である場合において、その代表者が現実に被用者の選任、監督を担当しているときは、右代表者は同条項にいう代理監督者に該当し、当該被用者が事業の執行につきなした行為について代理監督者として責任を負わなければならないが、代表者が単に法人の代表機関として一般的業務執行権限を有することから、ただちに同条項を適用してその個人責任を問うことはできないと解するを相当とする。

したがって、被告牧内正一をもって、同条項にいう代理監督者であるとするためには、同被告が被告津田弘司の使用者たる被告三重開発株式会社の代表取締役であったというだけでは足りず、同被告が現実に右被用者津田の選任又は監督をなす地位にあった事実をその責任を問う原告において主張立証しなければならない。

ところが、かゝる具体的事実については被告津田弘司本人尋問の結果によっても津田は不動産売買仲介、斡旋等の営業を担当していたこと本件事故後津田は被告会社をやめているが、それは営業部の上司である課長との意見の喰違いによること等に徴してみれば実際に会社の役員として常勤して仕事をしているのは被告牧内であるとしてもそれ以上には被告会社の組織管理の実態も明らかにされず、他にこれらを認めるに足る立証があったとみることもできない(因みに原告は被告牧内正一の本人尋問を求めていたが、右牧内において尋問期日に出頭しなかったため、その尋問申出を放棄した)から、原告の被告牧内に対する本訴請求はすでにこの点において理由がないものとして棄却を免れない。

第三損害

1  受傷、治療経過等

≪証拠省略≫によれば、

原告は本件事故により前額部打撲血腫、後頭部打撲血腫、左前腕、上腕打撲、腹部打撲、脾臓破裂、腹腔内出血、左母指打撲の傷害を受け、事故当日堺市大浜北町にある阪堺整形外科外科病院に入院、一般状態極めて悪く、全身麻酔のもとに脾臓摘出、昭和四八年八月二一日脳波検査の結果異常あり、昭和四九年一月一一日脳波なお悪し、同年四月一日退院(入院二六九日間)同年五月二〇日なお脳波異常あり、結局昭和五〇年一月三一日をもって症状固定と診断されたもののなお脳波に乱れがあり、後遺障害として脾臓剔出、長期入通院加療によるも頭痛消失せず長期療養の結果からみて今後の回復見込みについても困難であること等の事実が認められる。

2  治療関係費

(一)  治療費

≪証拠省略≫によれば、(1)昭和四八年七月七日から昭和五〇年一月三一日までの阪堺整形外科外科病院における治療費は金一九六万九七一〇円であることが認められるほか≪証拠省略≫によれば(2)昭和五〇年二月一日以降昭和五〇年三月一四日までの間に主として脳波検査料、他に投薬料等として二万三五二〇円を要しており、これは症状固定後のものではあるが、なお異常脳波があるか否かについてはそれまでにも医師が再再検査をした重要な点であり、その期間、傷害部位、金額等を考慮すればこれについても(1)とともに本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。

(二)  入院雑費

原告が二六九日間入院したことは、前記のとおりであり、右入院期間中一日五〇〇円の割合による合計一三万四五〇〇円の入院雑費を要したことは、経験則上これを認めることができる。

(三)  入院付添費

≪証拠省略≫と経験則によれば、原告は前記入院期間中入院初日から昭和四九年一月末迄の二一〇日間付添看護を要し、その間原告の母親が付添い一日二、〇〇〇円の割合による合計四二万円の損害を被ったことが認められる。

(四)  通院交通費

≪証拠省略≫によれば、原告は前記通院のため合計八、一〇〇円の通院交通費を要したことが認められる。

3  逸失利益

(一)  休業損害

≪証拠省略≫によれば、原告は事故当時一九才で、旭精工株式会社に勤務し、賞与を除いて一か月平均六五、四一八円の収入(昭和四八年一月から六月までの平均)を得ていたが、本件事故により、昭和四八年七月八日から昭和四九年五月二〇日まで休業を余儀なくされ、その間合計六八万一六一三円(一〇か月と一三日分)の収入を失ったこと、さらに≪証拠省略≫によれば、原告は右休業の結果昭和四八年末と昭和四九年夏期の各一時金の支給を受けるにあたって少くとも合計金三一万六九九〇円の賞与差額の損害を蒙ったことが認められる。

(なお原告が休業しなかったならば、支給されたであろう賞与額を決定する資料として原告と同じ会社に勤務する訴外中林リエ子、昭和二九年二月二五日生の給与証明を提出し、原告は同女と同額の賞与を支給されたのであろうとの前提で賞与額を算出しておるが、同女と原告との昭和四七年一月から昭和四八年六月までの平均月額給与の比率からみて、原告のそれは同女の賞与額の九割にとどめるのが相当である)

(二)  将来の逸失利益

≪証拠省略≫、および前記認定の受傷並びに後遺障害の部位程度(自動車損害賠償保障法施行令別表八級相当)によれば、脾臓摘出と長期入院、通院加療によるも頭痛消失せず、療養結果からみて今後の回復の見込みはなく、勤務ならびに日常生活に著しい影響を受けるとの医師所見であること。原告は家にいても治る見込みもないし、会社に行って仕事をしていれば気も紛れるからということで、昭和四九年五月二〇日から従来の勤務先である旭精工株式会社にベアリング組立の仕事に行っているが、天気が悪いと頭が痛くなり、また身体が何となく疲れ、疲れると気分が悪くなってくる。疲れがひどく事故以前のように仕事ができないこともあるが、他の従業員等原告が本件事故のため長期欠勤したことを知っている人々の理解に支えられてきたことと、右勤務先の会社が現在会社更生法による会社更生の申立をして、従業員の出勤日数も一般的に少ないため勤務を続けていること。また会社更生申立後は疲れるからといって、うっかり休んでもいられないのでそれまでよりも無理をしているふしもうかゞわれること。その他裁判実務上労働能力喪失割合を定めるにあたっての一つの参考資料とされる自動車損害賠償保障法施行令別表によれば、原告の如く脾臓を摘出したる者のその喪失割合は百分の四五と定められていること。さらに医学上一般に説明されている脾臓の生理的機能や、そこから原告のように従来健康体であった者が脾臓を失った場合に生ずるであろう諸々の脱落症状等を彼此考え合せると原告の事故前の収入と事故後の収入において同僚のそれと対比してみてもさしたる差損がないことをもってただちに将来にわたる後遺障害による財産上の損害がないとみることは衡平の見地からも相当でないが、将来の予測という性質上幾分控え目な算定にとどまることもこれまたやむを得ないところと考える。

そうすると、原告はその年令からしても前記後遺障害のため、昭和五〇年二月一日から少くとも三〇年間、その労働能力を平均して二〇%は喪失するものと認められる(それは主婦として家事労働に専従する場合も別に異らない)から、原告の将来の逸失利益を年別にホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、三八九万六八五二円となる。

昭和四九年度女子労働者(二〇から二四才)平均賃金一、〇八〇、七〇〇円×〇・二×一八、〇二九三=三八九万六八五二円

4  慰藉料

本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、治療の経過、後遺障害の内容程度、年令、その他諸般の事情を考えあわせると、原告の慰藉料額は三〇〇万円とするのが相当であると認められる。

第四過失相殺

前記第二の二認定の事実によれば、本件事故の発生については訴外山川修にも二割程度の過失が認められるところであるが、≪証拠省略≫によれば、本件事故発生当時右山川修と原告は恋人同士という間柄であって、事故当日は会社が休みで右山川修の家で(堺市鳳北町三丁目八七番地)夕食を共にする約束をしてあったので、食事をしたあと右山川修宅で雑談をしたりして午後九時過ぎに至って原告を当時の同人宅(堺市鳳東町七丁七四四番地)に送り届けるべく、自動車に同乗させ、途中ドライブをしようということでドライブ中本件事故にあったというものであって、単なる同乗者たる原告に損害発生に対して格別非難すべき行為もないので、過失相殺の法理を直ちに適用すべき理由も認められない。さらに原告と訴外山川修とは本件事故後たる昭和五〇年五月六日に婚姻したことが認められるけれども、本来原告に対する関係では被告らとともに共同不法行為者にあたる右山川修と原告が婚姻関係に入ったからといって、別段そのことによって扱いを異にして、右山川修の過失をもって、被害者側の過失として民法七二二条により、過失相殺して原告の損害額を減額すべき事由とはなし得ないものであるから、結局被告らの過失相殺の抗弁は理由がない。

第五損害の填補

本件事故による損害については、次のとおり損害の填補がなされていることは原告が自認しているところである。

自動車損害賠償責任保険から金三三六万円

他に治療費のうち金一〇〇万円

第六弁護士費用

本件の事案の内容、審理経過、認容額等に照すと、原告が被告らに対して本件事故よる損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は六〇万円とするのが相当であると認められる。

第七結論

よって被告三重開発株式会社および被告津田弘司は各自、原告に対し、六六九万一二八五円、およびうち弁護士費用を除く六〇九万一二八五円に対する本件不法行為の翌日である昭和四八年七月八日から支払済まで年五分の割合による遅延損害金を、それぞれ支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で正当であるからこれを認容し、被告牧内正一に対する請求および津田弘司、被告三重開発株式会社に対するその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 相瑞一雄)

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